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                     甲子園出場を目指すなら コノ高校!

                                    手束 仁著

                               

 愛知県で「甲子園出場を目指すなら、コノ高校」として、愛工大名電、東邦、中京大中京、春日丘杜若、時習館、大府の7校があげられています。時習館も名前が挙げられているのには驚きました。


(1)大規模完全スポーツ強化校型

他の運動部も強く、お互いの刺激がさらなる向上心を育む環境

 作新学院、仙台育英、東北、浦和学院、埼玉栄、愛工大名電、鹿児島実、松商学園、報徳学園、東福岡、土浦日大、八王子、清和実業学園、星稜、福井工大福井

愛工大名電(愛知県名古屋市)

イチローの母校で一気にに人気上昇

 戦前からの野球の名門校がひしめきあっている愛知県にあって、戦後になって野球部を創部。比較的短期間で強化に成功し、現在では県内でも名古屋市内の私学4強として、中京大中京(旧中京)、東邦、享栄と並んで甲子園に近い学校として評価されています。また、日本の生んだスーパーヒーローとして現在メジャーリーグのシアトルマリナーズで大活躍のイチロー選手の出身校であるということから、イチローがオリックスでシーズン200本安打を記録したあたりから、人気もすさまじいものとなりました。
 学校そのものは1912(大正元)年に電気工学講習所として創立されています。学制改革で名古屋電気高、さらに名古屋電工(名電工)となり、その後再び名古屋電気高を経て83年に系列校の愛知工業大学の付属的色合いを強く出すということから現在の愛工大名電となり、今日に至っています。創部は56年で、その10年後あたりから県内でも頭角を表わし始めました。
 77年にイチローを育てた中村豪監督が就任して、その強さは県内でも定着してきました。81年には、工藤投手が1回戦でノーヒットノーランを記録するなどして快進撃、ベスト4に進出して、全国にその名前を知らしめるようになりました。
 この頃からチームの特色が強くなってきて、愛工大名電で野球をやりたいという生徒が多くなってきたようです。愛知県では東邦、中京などに代表されるような、徹底した練習で訓練された、緻密でソツのない野球というのが主流でした。そんな中で、愛工大名電の野球は、豪快で奔放なイメージでした。それだけに、当時はやんちゃ坊主的な印象もありましたが、現在ではそれが個性的な野球ということで評価されています。また、そういう野球であったからこそ、イチローのような選手が出てくることができたのでしょう。
 また、グラウンドや合宿所は名古屋市内ではなく、隣りの春日井市にありますが、その設備の充実ぶりには定評があります。中村監督から、教え子の倉野監督へ引き継がれても、そのチームカラーは健在です。グラウンドの広さが、長距離打者を育成する背景にもなっているようです。
 98年に甲子園出場したチームのエースだった小宮祐希選手は、その後受験で難関国立大学の筆頭格である名古屋大学に現役合格し、話題となりました。愛工大名電の学校のレベルが向上していることの何よりの証明となると同時に、野球か勉強か迷っている優秀な中学生への好手本にもなりました。

●甲子園歴 春4回、夏5回。通算8勝9敗
●近年の実績 01年春季県大会準優勝
●主なOB 工藤公康、イチロー、山崎武司
●系列校 愛知工業大(愛知大学野球リーグ)
●その他の実績のある部 バスケットボール部(全図高校選抜大会優勝)、バレーボール部、卓球部、陸上競技部など多数

(2)宗教系全国野球エリート集合型

全国の優秀選手が集まって、甲子園とさらにその先での活躍を目指す

 PL学園、創価、関西創価、桜美林、智弁学園、天理、平安、比叡山、上宮太子、埼工大 深谷、光明相模原、聖望学園、海星

(3)地域少年野球エリート集合型

甲子園に出場することはもちろん、さらにその上を目指して意識が高い

 横浜、桐生第一、帝京、国士舘、常総学院、東邦、樺南、金沢、拓大紅陵、堀越、北陽、広陵、佐久長聖、近江、その他(岡山理大付、柳川、柳ヶ浦、九州学院、日南学園)

東邦(名古屋市名東区)

東海地区のサラブレッド集団の誇り

 戦前は、東海地方の野球は非常にレベルが高く、甲子園でも幾多の歴史を築いています。中でも、愛知県勢は中京(当時中京商)を頂点として、それに追いつけ追い越せとばかり東邦商(当時)も、強力打線に磨きをかけて打撃のチームとして活躍していました。
 現在でも、愛知県の高校野球は私学4強という呼ばれ方をすることが非常によくあります。具体的には東邦と中京、享栄、愛工大名電ということになります。その中で、一番のリーダー格でもあった中京が、大学の付属色が強くなって校名も中京大中京となったことから、何となく学校のイメージも変わってきました。野球部も、かつては愛知県のみならず、東海地区を席巻した迫力はいささか失せてしまったというのが正直なところではないでしょうか。
 それに対して、戦前から中京のライバルとして競い合ってきた東邦は、男女共学にはなったものの、野球部のあり方や方針は変わっていません。そういう意味からは、現在はむしろ愛知県下では東邦が一番甲子園に近い学校という意識が定着してきているようです。したがって、甲子園を目指す少年野球や中学野球部の精鋭たちは競うようにして東邦の門を叩いています。
 もう一方の雄でもある愛工大名電がその施設とイチロー効果を誇るのに対して、東邦の場合は伝統に根差した厳しさと規律の正しさが周囲から評価を受けているようです。
 東邦はもう何十年も阪口慶三監督がチームを率い、高校野球は教育であるという信念の下、徹底した指導を行っています。ある意味では、ややアナクロチックとも思われる要素があるかもしれませんが、それでもそういう東邦の野球を見守っているファンたちは期待しているようです。
 実務的には、77年夏に板本佳一投手で準優勝を果たした時の主将でもある森田泰弘コーチが見ています。阪口門下の優等生でもあった森田コーチですが、駒大で控えを経験したことによって、より広い視野で野球を見つめられるようになったのではないでしょうか。伝統的に春の選抜に強く、最近でも88年に準優勝し、その実績と悔しさをバネに翌年は元木大介(読売)のいた上宮を下して4度目の日本一に輝きました。
 この実績によって、「やっぱり東邦は強い」という意識が県内の人々に再び芽生えて、名古屋市を中心として有力な選手が集まるようになってきました。とくに、古くからのファンが多く、東邦ブランドに対しての人気は非常に高いものがあるでしょう。

●甲子園歴 春24回、夏13回。通算60勝33敗 1分。優勝4回、準優勝3回
●近年の実績 99年選抜大会、選手権大会出 場。00年秋季東海大会準優勝。01年選抜大会出場
●主なOB 山田書久男ほか
●入学の目安 内申書32以上
●その他の実績のある部 水泳部、ブラスバンド部、アメリカンフットボール部

(4)大学付属系列型

ある程度進路が見えているので、選手たちも野球に集中して取り組める

 日大三、日大藤沢、その他の日大系列(日大一、日大二、日大豊山、日大鶴ケ丘、日大高、日大三島)、東海大相模、東海大菅生、東海大浦安、その他の東海大系列(東海大四、東海大山形、東海大望洋、東海大甲府、東海大翔洋、東海大仰星)、国学院栃木、国学院久我山、早稲田実、法政二、中京大中京、専大松戸、立教新座、東洋大姫蕗、慶応義塾、その他の大学付属校(関西学院、閑大一、近大付、同志社、立命館、立命館宇治)

中京大中京(名古屋市東区)

日本一の野球名門校の自負がある

 戦前戦後を通じて、高校野球の学校の中で一番の勝利数と優勝回数を誇る名門中の名門校です。中京商から中京高そして、95年から系列の中京大の付属色を強く打ち出して中京大中京となりました。伝統のユニホームもその時に変更されましたが、現校名になって97年選抜大会で準優勝して、名門校健在ぶりをアピールしました。そして、久しく遠ぎかっていた夏の甲子園にも00年に13年振りに復活して、ニュー中京が甲子園でやっとなじんできたようです。
 現在の中京大中京は男女共学となり、学校のイメージも変わってきました。野球部は、頭髪も自由でスポーツ刈りの選手なども見受けられます。それでも、中京の名前の力は浸透力があり、選手は愛知県全域や岐阜、三重などからも甲子園を目指して入ってきます。伝統の堅い守りとソツのない野球に加えて、近代トレーニングにより、パワーアップしたスケールの大きさも魅力となっています。

●甲子園歴 春26回、夏23回。通算117勝39敗。優勝10回、準優勝4回
●近年の実績 00年選手権大会出場
●主なOB 木俣達彦、紀藤真琴
●系列校 中京大
●その他の実績のある部 サッカー部、陸上競技部

(5)スポーツ強化中堅私学校型A(甲子園経験組)

スポーツ枠を使って、各地の好素材の選手が門を叩く強豪校

 関東一、宇都宮学園、御殿場西、静岡学園、岩倉、花咲徳栄、横浜商大高、平塚学園、日本航空、二松学舎

(6)スポーツ強化中堅私学校型B(甲子園未出場組)

全国に一番多い、あと一歩で甲子園に届く地元の強豪校

 安田学園、中央学院、構浜隼人、相洋、その他(成立、駒場学園、向上、立花学園、横浜商工、東京学館浦安、東京学館、二松学舎沼南、加藤学園、興誠、春日丘杜若

 甲子園にはまだ出場していないけれども、地元では野球部の強い強豪として知られている私立校。実は、こういう学校は各地に非常に多くあります。毎年夏の大会ではベスト8〜4に残ったり、秋季大会、春季大会などでは優勝、準優勝をしたりもしています。組み合わせ抽選では何度もシード校になったりしていますから、地元ではやはリマークされる存在であることは間違いないでしょう。甲子園に対しての思いが一番強いのもこのクラスに入る学校ではないでしょうか。
 これらの学校では指導者も甲子園経験のある指導者を招き入れたり、グラウンドの設備なども充実させたりという努力をしています。好素質の選手に積極的にアプローチして、チームの核となって壁を破りたい希望も強く、好条件での誘いも多くあります。

 静岡の加藤学園、興誠もスポーツ強化の一環で野球部に力を入れています。愛知県では中部大の系列の春日丘が近年上位の常連となつてきました。名鉄が経営母体の杜若も注目校の一つです。


(7)野球留学生強化型

なぜか批判を浴びやすいが、選手の決断と勇気は並大抵ではない

 光星学院、青森山田、尽誠学園、明徳義塾、酒田南、鶴岡東、学法石川、敦賀気比、北照、倉吉北、江の川、岡山学芸館、益田東、その他(開星、出雲北陵、鳥取城北、延岡学園、明豊、日生学園第二)

(8)私立校文武両道分業型

学校経営としても注目の、新時代のエリート型スタイルともいえる

 智弁和歌山、桐蔭学園、桐光学園、春日部共栄、世田谷学園、駿台甲府、新潟明訓、上宮、京都成章

(9)都市名付名門公立商(工)業型

伝統もあり、OBやファンも多く地元の人気が高いが、女子生徒の増加が難

 横浜商(Y校)、水戸商、県岐阜商、広島商、松山商、徳島商、福井商、福島商、宇部商、佐賀商、静岡商、浜松商、前橋工、甲府工、四日市工、熊本工、高崎商、銚子商、高岡商、富山商、高知商、大分商、その他(千葉商、東金商、君津商、島田商、長野商、八幡商、倉敷商、高松商)

(10)旧制中学系文武両道型

高野連からの評価も高く、甲子園でも「さわやか」という形容がつきやすい

竜ヶ崎一、前橋、札幌南、安積、秋田、郡山、松山、時習館、盛岡一、山形東、熊谷、春日部、湘南、新潟、長岡、松本深志、岐阜

 日本では、とくに昔から文武両道というのはある種の理想の姿というイメージが強いようです。それは高校野球であっても同じことです。だから、進学実績もよくて、スポーツも強いという学校は自ずと高い評価を受けやすいという状況になります。まして、旧制中学時代から、その地域の優秀な生徒が通っていたような学校はとくに地元での評価も高く、野球部も高い支持を受けています。
 戦後になって教育制度が変わって、かつての中等学校が義務教育3年間の中学と、その上の高校とに分かれて、現在の6・3・3制の制度になりました。そして、地元の地名のついた中学の多くがそのまま高校になっていきました。いくつかの県や都・府ではナンバースクールというのがその前身でもあるのです。これは、比較的人口の多い都府県の傾向ということがいえるでしょう。例えば、愛知県では愛知一中が旭丘、愛知四中が豊橋中となって時習館というような校名変更を経ています。福岡県では小倉や福岡もありますが、修猷館なども同様です。鹿児島県でも一中が鶴丸、二中が甲南となっています。
 そういった例とは別の県では、その土地の都市名のついた中学がその名前のまま高校になっていくというパターンが一般的でした。新潟中が新潟高、岐阜中が岐阜高などがそうです。あるいは、それに一、二、などの数字がついていく盛岡一や、東西南北のついた札幌南、山形東、松山東なども一般的なパターンといっていいでしょう。
 このような学校は今日でも、進学成績でも実績があるため、地元では人気校ということがいえます。ですから、地域の期待も大きいし、文武両道という心地よい言葉の響きもあって声援を受けています。
 それに、進学実績のいい学校ですからいわゆる地元の名士や、功成り名を遂げた人も多く、それだけ各方面からの支援を得られやすいという面もあるでしょう。とくに、チームの評判が高い年などは、早くからOBたちの期待が膨らんでいくものです。それをプレッシャーと感じることなく、自分たちの励みとしていくことができれば、より高い成果が得られるのではないでしょうか。
 2001年の選抜の21世紀枠で福島県の安積高が選ばれたのも、そんな地域社会の背景があったからではないでしょうか。ある意味では21世紀枠代表候補が多いグループともいえます。

時習館(愛知県豊橋市)

愛知四中時代の伝統を受け継いで・・・

 愛知県では旭丘と並んで名門中の名門といわれています。県内屈指の進学校でありながら、愛知四中−豊橋中時代からの伝統で部活動も盛んで、各方面で好成績を残しています。野球部も、県内では圧倒的な実力を持つ強豪校を倒すなどして、毎年印象に残る活躍をして、大いに注目され人気を集めています。卒業後は慶大など東京六大学でプレーする選手もいます。

●甲子園歴 春2回、夏1回。通算1勝3敗
●近年の実績 2001年愛知大会ベスト16、2002年愛知大会ベスト4

(11)地域密着公立普通科校型

高校野球は地場産業でもあるという典型の地元密着の人気校

 上尾、鷲宮、習志野、藤代、宇都宮南、市川、市銚子、新湊、大府、箕島、その他(池田、津久見、岡山南、岡山城東、浜田、大社、鳥取西、米子東、八頭)

大府(愛知県大府市)

私立勢力に敢然と立ち向かえる公立の雄

圧倒的に名古屋市内の私立校が強い愛知県にあって、公立の雄として頑張っている一番手です。愛知県伝統の中京野球を追随したスタイルですが、プレーのひたむきさには地元でも定評があります。81年に甲子園に出場した馬場監督が毎年好チームに仕上げています。

●甲子園歴 春4回、夏2回、通算4勝4敗
●近年の成績 94年、95年選抜大会出場。00年愛知大会ベスト4
●主なOB 槇原寛巳、赤星憲広

(12)公立体育科強化システム型

各地に増えてきた、公立校で体育科を設置して個性を生かす制度

 市船橋、大宮東、鳥羽、玉野光南、その他(伊奈学園総合、飯能南、児玉、大井、市柏、日川、山北)

(13)首都圏新鋭公立普通科型

熱心な指導者の下で、限られた条件ながら頑張る姿勢を周囲も支援

 百合丘、市稲毛、坂戸西、越谷西、桜丘、横浜南、その他(藤沢西、鶴嶺、城郷、県相模原、春日部東、北本、滑川)

(14)健闘都立校クループ

城東の実績が他の都立校に自信と刺激を与えて意識も明らかに向上

 城東、国立、江戸川、八王子北、保谷、世田谷工、日比谷、その他(東大和、府中工、南野、高島、雪谷、足立西)



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