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                         平成13年度(2001年)

 春季東三リーグ戦

一次リーグ(Bゾーン) 時習館 7−6 豊川 時習館 9−6 蒲郡 時習館 4−3 小坂井 時習館 14−1 新城 (4勝0敗)
二次トーナメント 【一回戦】 【敗者復活戦】 .
国府 17-7 時習館 福江 9-7 時習館


 第83回選手権大会(平成13年・2001年)愛知大会

第83回(平成13年・2001年)
1回戦 時習館 10:2 天白
2回戦 時習館 8:0 名大付
3回戦 時習館 4:3 豊田大谷
4回戦 時習館 8:5 一宮
5回戦 豊田西 6:3 時習館

                Cゾーン
              
      

【これ以降の資料は、捕手の大谷夏生くんの父兄光司さん及び右翼手寺部幸太郎くんのご父兄より提供していただきました】
  
1、選手紹介

 

打順 守備 選手名 学年 . 控選手名 学年
1 遊撃 村松幸彦(主将) 3年 佐藤敬太 3年
2 三塁 杉沢幸志郎 3年 小笠原堂裕 3年
3 中堅 日比孝昭 3年 鬼頭健王 3年
4 一塁 只野克典 3年 長坂雄人 3年
5 捕手 大谷夏生 3年 柴田和憲 3年
6 左翼 鈴木皓太 3年 原 桂太 2年
7 投手 鈴木宏征 2年 峰野 崇. 2年
8 右翼 寺部幸太郎 3年 石田智行 2年
9 二塁 立花歩己 3年 高橋拓馬 2年

2、時習館の戦前の戦力分析


 ■選手個々がそれぞれ状況を考えてプレーできる。機動力を生かして攻め、堅守で、横手投げの主戦鈴木宏征をどこまでもり立てられるか。

 ■2年生投手の鈴木宏征、原桂太は経験を積んだ。打線も1番村松から切れ目ない。攻守に杉沢幸志郎が流れをつくり、守備は捕手大谷夏生を軸に安定。全員野球で一戦一戦を全力で勝ち上がりたい。

 ■守りから勝機つかむ
 【戦力】エース鈴木宏征を中心とした守りのチーム。守りからリズムをつくり攻撃につなげる。
 鈴木は右横手投げで、切れの良い直球とスライダーが武器。投球術もさえる。控えの原桂太は直球に力がある。両投手ともテンポが良い。
 守備はセンターラインを中心に、まとまる。捕手大谷夏生は、昨夏からのレギュラーで経験豊富。中堅日比孝昭は守備範囲が広く強肩。村松幸彦、立花歩己の二遊間コンビはフットワークがいい。
 攻撃はバント、エンドラン、盗塁など、小わざを絡めて得点を重ねる。盗塁できる選手もそろう。
 【主将の抱負】一つでも多く勝ち、チーム全員でいい思い出をつくりたい。
 【監督の評価】技4、攻3、守3、走4
 【主要大会の成績】▽秋季東三河大会=一次リーグ敗退▽春季東三河大会=二次トーナメント進出▽春季全三河大会=二回戦進出
 【昨夏の大会】初戦敗退

 ■層の厚みで総合力高い
 【投手力】力のある直球と大きなカーブで打者を揺さぶる投球術にたける鈴木宏征と、安定度抜群の原桂太の二枚。共に防御率は2点台で、本来のピッチングができれば、そうは点をとられない。
 【攻撃力】四番唯野克典、五番大谷夏生が中心。只野は出塁率も五割と高く、あとに大谷が控えているのも心強い。一発の長打力があり、コース、球種にも対応できる打撃センスがある。
 【守備力】捕手大谷夏生を中心にセンターラインは強肩、堅守の選手で固めている。中継プレイの正確さが加われば一点を守る戦いができる。控えの厚いのが強味。
 【総合力】選手間に大きな力の差がなく、だれが出ても同じ戦いができる。攻撃ではスピードと長打力を兼ね備えた選手がそろっており、多彩な攻撃パターンができそうだ。
 【監督の抱負】派手ではないがチームワークは抜群。まずは一勝が目標。


3、各試合の経過
 
・1回戦(瑞穂球場)

時習館 天白 . 時習館 . 天白
1 1 0 守備 氏名 守備 氏名
2 1 0 [遊] 村松 4 2 0 . . [中] 野田晃 2 0 0 . .
3 5 0 [三] 杉沢 4 2 1 . . [二] 寺崎 3 0 0 . .
4 1 0 [中] 日比 3 1 0 . . [左] 岩佐 3 0 0 . .
5 1 0 0 0 0 . . [遊] 伊藤 3 2 1 . .
6 1 1 [一] 只野 4 3 1 . . [投]一 杉田 3 1 0 . .
7 X 1 [捕] 大谷 2 0 0 . . [三] 神谷 3 0 0 . .
8 [左] 鈴木皓 1 1 0 . . [右] 大西 2 0 0 . .
9 [投]中 鈴木宏 2 1 3 . . 山下 1 1 0 . .
10 2 [右] 寺部 3 1 1 . . [一] 小島 0 0 0 . .
[二塁打]
伊藤、只野、
杉沢、鈴木宏
[二] 立花 2 1 1 . . 河見 1 0 0 . .
. 山田 1 1 1 . .
大槻 0 0 0 . .
[捕] 野田侑 3 1 0 . .
25 12 7 0 5 25 6 2 6 3

 ■時習館は2点先行で迎えた3回、杉沢の二塁打から3連打。鈴木宏の二塁打に敵失も絡めて一挙5点を挙げ、試合の流れを決めた。
 天白は6回、伊藤の二塁打などで1点。7回にも1点を加えたが、及はなかった。

 ■時習館3回に集中打
 投打に上回る時習館が三回の打者10人攻撃で試合を決めた。杉沢、鈴木宏の二塁打を含む5安打を集中。天白守備陣の乱れもあり、一挙に5点。
 天白は、鈴木宏の力ある球に押され、伊藤の二塁打などで反撃したが遅かった。
 
・2回戦(瑞穂球場

時習館 名古屋大付 . 時習館 . 名古屋大付
6回裏時習館無死二、三塁、
杉沢三塁前に2点スクイズ
1 2 0 守備 氏名 守備 氏名
2 2 0 [遊] 村松 4 1 0 . . [中] 太田 3 0 0 . .
3 0 0 [三] 杉沢 2 0 3 . . [左] 2 0 0 . .
4 1 0 鬼頭 0 0 0 . . 佐藤 1 0 0 . .
5 0 0 [中] 日比 3 3 0 . . 山本 1 0 0 . .
6 3 0 [一] 只野 3 1 1 . . [捕]遊 犬飼 3 1 0 . .
7 X 0 [捕] 大谷 4 2 2 . . [右] 山田 3 1 0 . .
8 [左] 鈴木皓 4 3 1 . . [一] 河辺 3 0 0 . .
9 [投] 鈴木宏 2 0 0 . . 岡田 0 0 0 . .
8 0 1 0 0 . . [二] 首藤 2 1 0 . .
[三塁打]
山田、日比、小笠原
[二塁打]
日比、只野
[右] 寺部 3 0 0 . . [三]捕 2 0 0 . .
打右 柴田 1 0 0 . . [投] 西村 2 0 0 . .
[二] 立花 1 0 0 . . 加藤 0 0 0 . .
小笠原 1 1 0 . . [遊] 金子 0 0 0 . .
. 相馬 1 1 0 . .
遊三 小島 0 0 0 . .
上村 1 0 0 . .
29 11 7 4 4 24 4 0 2 3

  

 ■時習館がそつのない攻め。二番打者杉沢が2度のスクイズ場面で計3打点を挙げた。2回の得点機に最初のスクイズ。6回無死二、三塁で、二塁走者まで本塁に迎え入れた。
 名大付は時習館二番手の原の切れのよい直球を打ち損ない、適時打を出せなかった。

 ■時習館は1回、大谷の適持打で2点を挙げて先制。その後も確実に加点し、6回には杉沢の2点スクイズなどで3点を挙げコールド勝ちした。
 名古屋大付は1回、太田と犬飼の重盗で1死二、三塁としながら、後続が凡退。散発4安打に抑えられた。
 
・3回戦(瑞穂球場)

時習館 豊田大谷 . 時習館 . 豊田大谷
1 1 0 守備 氏名 守備 氏名
2 1 1 [遊] 村松 4 2 0 . . [左] 宮越 4 1 0 . .
3 2 1 [三] 杉沢 2 0 0 . . [中] 加納 5 1 0 . .
4 0 0 [中] 日比 4 2 0 . . [遊] 竹下 4 3 2 . .
5 0 1 [一] 只野 3 1 0 . . [捕] 斉藤 4 0 0 . .
6 0 0 [捕] 大谷 3 0 0 . . [右] 山田 4 1 0 . .
7 0 0 [左] 鈴木皓 3 0 1 . . [一] 鈴木 4 0 0 . .
8 0 0 [投] 鈴木宏 3 0 1 . . [二] 井本 4 2 1 . .
9 X 0 [右] 寺部 4 0 1 . . [投] 西村 4 1 0 . .
4 3 [二] 立花 1 0 0 . . [三] 浅井 3 0 0 . .
[三塁打]宮越
[二塁打]井本
打二 小笠原 1 0 0 . . 亀浦 0 0 0 . . 1回裏時習館無死一、三塁、
日比は三塁走者村松をかえす
遊ゴロを放つ
28 5 3 10 4 36 9 3 11 2


 ■時習館、巧みな投球
 時習館は1回、無死一、三塁から、併殺の間に三塁走者が本塁を踏み先制。3回に押し出しと鈴木宏のスクイズで2点を追加し、逃げ切った。
 豊田大谷は2回に井本の適持二塁打、3回には宮越の三塁打と竹下の適時打で点を重ねた。
時習館、巧みな投球
 シード校の豊田大谷が初戦の3回戦で敗れた。時習館のエース、鈴木宏征の緩急つけた投球に惑わされ、自慢の打撃が爆発しなかった。
 2回に同点に追いついた後、1死二塁の勝ち越しの好機に2者連続三振。6回も2死二、三塁で一打出れは逆転だったが、三振で終わった。後藤篤監督は「打線がつながらなかった」と話した。
 試合終了後、選手らはグラウンドに、しばらくうずくまったままだった。ベンチ裏に引き揚げた後も、通路で、球場の外で、泣きじゃくった。
 主将の加納祐也は、「(チームに)ちよっと気負いすぎたところがあった」と振り絞るように話した。9回2死三塁で回ってきた打席。「みんなともっと野球をしたい一心」でバットを振ったが、結果は内野フライ。
 時習館の鈴木投手は「先制できたので楽な気持ちで投げられた」。緩いカーブだけでなくコーナーをついたスライダーも投げ分け、「これまでの3試合で一番内容がよかった」と満足げだった。

 ■時習館序盤巧みな攻め。鈴木宏が好投、追撃かわす
 時習館5安打、豊田大谷9安打だが、安打数の少ない時習館が1点差で逃げ切った。
 豊田大谷は、専備の乱れが致命傷だった。特に一年生投手西村が送球ミスでピンチを広げ、自滅の形をつくったのが痛い。後半、立ち直って好投しただけに惜しまれる。
 時習館は一回に2敵失で好機をつくり内野ゴロ併殺の間に先制。二回も内野ゴロ、三回は押し出し四球と鈴木宏のスクイズで加点。後は鈴木宏が緩い変化球を武器に豊田大谷打線の追撃をかわした。
精いっぱい戦った
 シード校の豊田大谷が初戦で涙をのんだ。攻めては時習館の下手投げ鈴木宏のスローカーブにタイミングが合わず、好機をつくっても決定打不足。守っては守備のミスでピンチを迎えるなど実力を出し切れなかった。
 後藤監督は、試合終了後しばらく時間を置いてから「波に乗るまでに時間がかかった。エラーはいつもより多いといえばそうだ。バッティングも一人ひとり考えて相手ピッチャーに対処したが、選手たちの考えが十分につながらなかった。しかし、今日一日だけのことを考えると、精いっぱい戦ったと思う」と語った。

 ■時習館に敗れ、初戦で涙、豊田大谷がっくり
 こらえていたものが一気にあふれ出た。まさかの初戦敗退。豊田大谷の主砲斉藤俊雄捕手(3年)は、あいさつを終えるとベンチ前で泣き崩れた。「今は何も話せません」。そう絞り出すのがやっと。あとは涙で言葉にならなかった。
 高校通算50本塁打。プロも注目する斉藤のバットが快音を奏でることはなかった。「緩急を使ってうまく投げられた」と後藤篤監督(35)。4打席すべて走者を置きながら、いずれも凡打に終わった。
 「楽しくやろう」。打がだめなら守りでと、1年生エース西村をもり立てたが、序盤に4失点。力を発揮できないままゲームセットを迎えた。
 早すぎた最後の夏。だが将来がある選手。後藤監督は「気付いたことがたくさんあると思う。この試合をしっかりと受け止めてほしい」とエールを送る。Tシャツに縫い込んだ「飛ばし屋伝説」は、まだ終わらない。(中村彰宏)

 ■時習館一点差逃げ切り
 時習館は初回、無死一、三塁から内野ゴロ併殺の間に先制。
 同点の二回には一死三塁から八番寺部の速ゴロで勝ち越し、三回にも無死満塁から押し出しと七番鈴木宏のスクイズで2点を奪い、優位に立った。
 先発の鈴木宏も好投。スローカーブを有効に使い、強打の豊田大谷打線に最後まで的を絞らせなかった。
 藤城義光時習館監督談
 相手はシード校で、この日が初戦.地に足がつかないうちに畳み込み、浮き足立たせたのが奏を功した。

 ■緻密なり−ドと大胆な投球術(時習館バッテリー)

   
大谷捕手と鈴木宏投手

 緻密なリードと大胆な投球術。時習館の勝因は、その二つが絶妙にかみ合ったことだった。
 藤城監督の分析では、豊田大谷打線は緩急のゆさぶりに弱い。
 その指示をもとに、捕手の大谷夏生(三年)は内角の直球を見せ球に、外角のスローカーブで打ち取る配球。
 そのリードを信じ、投手の鈴木宏征(二年)は、大胆に投げた。
 「中途半端は絶対ダメ」と死球を怖れずに内角を攻め、スピードを最大限に殺したカーフを外角いっぱいに配した。
 走者がいてもスローカーブを駆使したせいで4つの盗塁を許したが、直球のキレとカーブのブレーキは最後まで衰えず、11三振を奪った。
 試合後、「最高のリードをしてもらいました」と鈴木が先輩に敬意を表せば、大谷も「強力打線を少しも怖がらなかった。たいしたものだ」と感服の笑顔。
 剛球派の先輩ができなかった「打倒強豪私学」の偉業を、いかにも時習館らしいバッテリーで成し遂げた。
 
・4回戦(豊田市運動公園)

一宮 時習館 . 一宮 . 時習館
1 0 3 守備 氏名 守備 氏名
2 0 1 [中] 川除 4 2 0 . . [遊] 村松 5 2 0 . .
3 0 1 [遊] 小川英 3 3 1 . . [三] 杉沢 3 1 0 . .
4 0 0 [二] 村川 5 1 1 . . [中] 日比 4 3 2 . .
5 0 0 [一] 椿 5 0 0 . . [一] 只野 4 2 2 . .
6 0 0 [右] 小林 2 0 0 . . [捕] 大谷 4 0 0 . .
7 0 1 [左] 小笠原 2 0 0 . . [左] 鈴木皓 3 3 1 . .
8 5 0 打左 寺沢 1 1 3 . . [投] 4 2 0 . .
9 0 2 [三] 田中 3 0 0 . . 鈴木宏 1 0 0 . .
5 8 [捕] 堀田 3 0 0 . . [右] 柴田 2 0 0 . .
[本塁打]
只野、鈴木皓
[二塁打]
日比、鈴木皓、寺沢
[投] 中島 0 0 0 . . 長坂 1 0 0 . .
古田 2 0 0 . . 寺部 1 1 0 . .
秋田 1 0 0 . . [二] 立花 2 0 0 . .
小川聖 0 0 0 . . 佐藤 1 0 0 . .
梅田 1 0 0 . . 小笠原 0 0 0 . .
31 7 5 2 7 35 14 5 6 6

 ■終盤の粘りも一宮あと一歩
終盤、粘る一宮を時習館が突き放した。1点差に迫られた時習館は9回、鈴木皓の安打と四球、盗塁、敵失などで2点を挙げた。また、序盤には只野と鈴木皓の本塁打などで先行した。
一宮は8回、川除、小川英、.村川の3連打や寺沢の走者一掃の二塁打などで一挙5点を挙げた。9回にも川除、小川英の連打と四球で2死満塁と粘りを見せた。

 ■時習館が長打攻勢、八回反撃も一宮及ばず
 序盤に5点を奪った時習館が試合を有利に運び、粘る一宮を振り切った。
 時習館は一回、一死一塁から日比の適時二塁打で先制。続く只野が左翼席に2点本塁打を放った。
 4点リードで迎えた三回には、先頭鈴木皓の左本塁打で追加点。5点リードの七回には二死三塁から暴投の間に三塁走者日比が生還し、6点目を入れた。
 一宮打線は八回、時習館の先発原をとらえ、2点を返してさらに二死満塁とし、代打寺沢の走者一掃のフェンス直撃二塁打で1点差に迫ったが、その裏に失策などを絡めて2点を許し、力尽きた。
 
・5回戦(瑞穂球場)

時習館 豊田西 . 時習館 . 豊田西
1 2 0 守備 氏名 守備 氏名
2 0 0 [遊] 村松 0 0 0 . . [二] 岩瀬 3 0 0 . .
3 0 0 [三] 杉沢 3 0 0 . . [中] 鈴木 3 1 2 . .
4 0 0 [中] 日比 4 1 0 . . [右]投 成瀬 4 2 2 . .
5 1 1 [一] 只野 4 1 1 . . [三] 市川 5 1 0 . .
6 0 0 [捕] 大谷 2 0 0 . . [一] 山崎 5 1 0 . .
7 0 0 [左] 鈴木皓 4 1 0 . . [遊] 足立 4 2 2 . .
8 0 2 [投] 鈴木宏 3 0 0 . . [投] 小林 3 1 0 . .
9 0 3 1 1 0 . . 城殿 1 0 0 . .
3 6 [右] 寺部 3 0 0 . . [捕] 山田裕 2 1 0 . .
[三塁打]
足立
[二塁打]
小林、成瀬
佐藤 1 0 0 . . 走捕 2 1 0 . .
[二] 立花 3 0 0 水野 0 0 0 . .
. [左] 斉藤 3 1 0 . .
宮松 0 0 0 . .
28 4 1 7 4 35 11 6 2 2


1回裏時習館、暴投の間に
生還する日比

8回表豊田西一死三塁、城殿のスクイズは投飛と
なり、飛び出していた三塁走者足立も併殺、三塁手杉沢

9回表豊田西一死二、三塁、鈴木のスクイズで
三塁走者の岡が勝ち越しの生還。

 ■豊田西、終盤に逆転
昨年夏の愛知大会準優勝の豊田西が、終盤に地力を見せた。2点を追う8回、1死一、三塁で足立が右中間に三塁打を放ち、同点にした。9回、岡の中前打や四球などで1死二、三塁とし、鈴木のスクイズと成瀬の適時二塁打で勝ち越した。
 時習館は1回、1死一、三塁から只野の右前適時打や暴投で2点を先取。5回にも四球の走者を三塁に進め、敵失で−点を追加した。だが、6回以降は小林、成瀬の継投に一安打に抑えられた。

 ■八回に同点、九回逆転
 経験の差が試合の明暗を分けた。
 時習館の先発・鈴木宏は勝利を意識した八回、先頭の成瀬に痛恨の死球。一死後、五番山崎、六番足立に初球をうまく右に運ばれ同点に追いつかれた。
 続き九回、時習館は鈴木宏−原の継投で必死の防戦を図ったが、二つの盗塁に、送りバンド、スクイズを決められ致命的な3点を失った。
 しかし、時習館は健闘した。
 一回に一死一、三塁から四番只野が巧みに右前へ流して先制。
 1点差に追いつかれた五回も、四球出塁の一番村松をバントと内野ゴロで三塁に送り、四番只野の強烈な三塁ゴロ(記鐘は失策)で再びリードを2点に広げた。
 守っても、鈴木宏が終盤まで、対豊田大谷戦と同様に緩い球を有効に使って好投。バックもわずか1失策と、堅い守りで投手を支えた。

 ■小柄な4番打者時習館・只野選手
 身長167cm、体重65キロの只野克典一塁手(3年)。昨秋、藤城監督から「四番は任せた」と告げられた時、うれしさと同時に「この体でやつていけるだろうか?」と不安にかられた。
 時習館の四番打者は山口、林、中田雄など、いずれも大柄の強打者。「ぼくで、いいのだろうか」と心底、苦しんだ。
 苦しんだ末にたどり着いた結論は、「四番日の打者と考え、つなぎ役に徹しよう」だった。
 今大会では、その考え通り、好球必打だけを心がけ、前日まで14打数7安打4打点。この日も一回に先制安打、五回にも失策を誘う強烈なゴロで、立派に四番の大役を務めた。
 「体は小さいから、大学や社会人では通用しない。本格的な野球はこれで終わり」とぽつり。小さな四番の大きな夏が終わった。

 ■同点の九回、豊田西は時習館の二番手原を攻めて一死二、三塁から鈴木のスクイズで勝ち越し。成瀬の右翼線二塁打で2点ダメ押しして苦しい試合をものにした。八回、足立の同点三塁打が出るまでは、時習館・鈴木宏の緩急をつけたピッチングに手こずった。
 先発小林は立ち上がり、いきなり四球でリズムを崩し2点を失った。五回には味方の失策で追加点を与えて後手に回ったが、七回から主戦の成瀬を投入して味方の反撃を待ったのが最後に実った。
制球力には脱帽
 春日丘に勝った豊田西、豊田大谷を破った時習館と共にシード校を倒しての対決だった。「いやぁ、時習館の鈴木宏のコントロールには参りました。豊田勢が同じピッチャーにやられていいのか、と選手にハッパをかけたが、思うようにはいきません。足立がよく打ってくれ(同点打)最後はやっと勝てたという感じです。成瀬はできるものなら温存したかったが、それで負けては悔いが残るので継投しました。とにかく勝ててよかった」と平林監督はホッとした表情をみせた。

 ■時習館、地道な練習”開花”。最後まで互角「悔いなし」
 スター選手なんていない。ひたむきな練習、チームワークで五回戦まではい上がってきた時習館。強豪・豊田西と、最後まで互角の戦いを演じた。試合後、泣き崩れたナイン。「ようやったぞ。誇りを持とう」。目を真っ赤にはらした藤城義光監督が一人ずつに呼び掛けた。
 もともと、こんなたくましいチームではなかった。新チーム結成直後の地区リーグ戦は、一勝三敗一分け。「悔しくて。みんな目的意識を持ち、冬を頑張った」と鈴木皓太選手。筋トレ、走り込み・・・。地道な練習が春から夏、力に変わった。
 それでも「派手なホームラン、長打攻勢は難しい」と、村松幸彦主将は言う。目標は、チーム一丸でコツコツ点を重ね、それを守る野球。打者は次の打者につなぐ。二人の二年生投手を上級生がもり立てる。そんなカラーが出来上がった。
 時習館らしさは、一回から出た。選球眼のいい村松主将が四球で出て、三番の日比孝昭選手は渋い内野安打。続く只野克典選手の右前安打で先制した。相手投手の暴投で2点目。少ない好機を確実に生かした。五回は四球の走者を大事に生かし、無安打ながら犠打と敵失で1点。七回まで3−1とリードした。
 しかし、二人の二年生投手が終盤、つかまった。連投の疲れはさすがにピーク。粘りの投球を続けた主戦鈴木宏征投手が八回、長打を浴び、同点に追いつかれた。九回途中、代わった原桂太投手も抑えることはできなかった。
 だが、昨年準優勝校の豊田西をギリギリまで苦しめ、3回戦ではシード校の豊田大谷も破ったこの夏の戦い。村松主将は「悔いはない」と言い切った。「力は相手がはるかに上。でも、チームが一丸になれば戦えた」
 こみ上げてくるものを懸命に抑えながら、藤城監督が語りかけた。「これからの長い人生。どんなことがあってもあきらめるな。相手がどう、じゃない。自分との戦いなんだ」。ナインは、両目からまだポロポロ涙を流したまま、うなずいた。(今村 実)


 愛知大会は、弥富高校が豊田西を9−7で敗り、甲子園に出場した。 全国大会は日大三高が優勝した。

 秋季東三リーグ戦

一次リーグ(A ゾーン) 時習館 8−5 渥美農 時習館 5−2 豊橋東 時習館 27−0 黄柳野 桜丘 8−5 時習館
豊橋東・桜丘・時習館ともに3勝1敗だったが、二次トーナメント進出ならず



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