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                            昭和32年度(1957年)

 昨夏に八人もの部員を送り出したが、新チームは秋の全三河大会優勝の勢いを、そのまま春の東三リーグに持ち込み一次全勝、二次も五勝(一分け)で優勝して幸先よいスタートを切った。

春季東三リーグ戦 三月二十五日〜 豊橋球場ほか

                                時習館 7ー0 田口
                                時習館 棄権 本郷
                                時習館 7ー0 国府
                       二次リーグ  時習館 6ー3 国府
                                時習館 7ー5 成章
                                時習館 5ー0 豊川
                                時習館 7ー0 豊商
                                時習館 2ー2 豊橋工
                         優勝     時習館 2ー1 豊橋工

全三河大会 豊橋球場

               一回戦 四月二十八日  岡崎工300000000−3  稲垣ー水野
                                時習館000100000−1  戸田ー鈴木

 番狂わせ 時習館敗る。岡崎工が金星
(中日)岡工は初回二死後から水越の右翼線二塁打を足場に2四球、長永の左前安打、重盗とその間に時習館左翼手の本塁大悪投、内野陣の不手際なども加わって難なく三点丁先行した。好投手稲垣の力のこもったピッチングの前に時習館としてもこの得点差は大きく、懸命のくいさがりも空しく四回鈴木の二塁打と敵失を利して一点を返しただけで、ついに優勝候補の一角はもろくも崩れ去った。
 岡工の勝利の原動力はなんといっても時習館打線から十個の三振を奪った稲垣投手の快投である。時習館も八回に迎えた無死満塁の好機に打球が野手の正面をつく不運もあって一矢をも報い得なかったとはいえ最後まで試合を捨てずに敢闘した時習館のマナーも立派だった。

県下大会 鳴海球場

            一回戦    五月五日      時習館2ー0愛知商

           準々決勝戦 五月十九日    時習館010203013−10
                               享栄商200000003−5

           準決勝戦   五月二十六日  時習館000000000−0
                               中京商00010300X−4

遠征・招待試合

                         六月九日  時習館 1ー0 浜松西  (浜松西校庭)
                           〃    時習館 9ー0 榛原    (   〃    )
                           十二日 時習館 6ー0 桑名    (豊橋球場)
                           十六日 時習館 7ー1 浜松北  (  〃   )
                            〃   愛知大 3ー0 時習館  (  〃   )



  ■第39回選手権大会(昭和32年・1957年)の愛知県大会 “ベスト4”

 第39回全国高校野球選手権大会愛知大会は七月二十一日から鳴海、豊橋、刈谷、一宮の四球場で開催された。

 時習館は、準々決勝で春の全三河大会で敗れた岡崎工を完封で倒し、準決勝まで進んだが津島商工に敗れた。

一回戦 七月二十一日 刈谷球場

  昭  和200000000−2
  時習館00002200X−4

 佐野、大会第一号ホームランで逆転
(朝日)時習館の投手戸田は立上り調子が整わず、一回昭和の森岡、三宅に連安打された。しかも一塁手が凡ゴロをはじいたために、二点の先行を許し、苦しい試合となった。昭和宗宮投手の球を打ちあぐんでいた時習館の打線は五回になってやっと本調子になり、この回三安打、二四球で同点にこぎつけて宗宮を退けた。
 六回にはトップ打者佐野が1ー1後、代った立木の高めの球を左翼スタンド三百十〓にたたき込む大会第一号ホームランを放ってやっと逆転した。
 非力の昭和が先行点をタテに有利に試合を進めるようにみえたが、結局は時習館の実力がモノをいった試合。

二回戦 七月二十五日 刈谷球場

  岩  津000000000−0
  時習館10400000X−5

 岩津、戸田・山本両投手を全く打てず
(朝日)攻守に一枚上手の時習館に岩津が善戦したというゲームだった。時習館は初回四球に出た沖田が巧走して鈴木の左前安打で還り、三回には中尾四球のあと、森、鈴木、本多が中、左に連打、この回で試合を決めた。 岩津は押されながら元気一杯に戦った。ただ時習館の戸田、山本両投手が全く打てなくては勝味がなく、二塁を踏む者わずか二人で敗れ去った。

三回戦 七月二十七日 鳴海球場

  成  章0000000010 −1
  時習館1000000001X−2

 延長10回時習館、成章に勝つ
(朝日)時習館戸田、成章高橋両投手とも立上りが不安定だったが、成章はトップの中村が四球で出塁したものの後続がなく、得点出来なかったのに対し、時習館は一死後死球で出た鈴木が戸田の三塁ゴロ失で一挙三進、打者佐野の時、本盗を敢行して先制の一点をあげた。
 その後は戸田、高橋両投手とも立直り、両チーム野手の再三の美技もあってそのまま時習館が押切るかにみえたが、九回表、成章は四球の松井と中神のバントで送った後、伊藤守の中前安打が出て同点、延長線に持込んだ。 しかし時習館は十回裏無死敵失で出た山本を鈴木のバントと戸田の中前安打で三塁に進め、続く本多の巧みはスクイズで迎え入れて勝利をにぎった。地元強豪同士の対戦にふさわしい熱戦だったが、時習館の巧みな試合運びが紙一重の勝利をもたらしたわけだ。

四回戦 七月二十九日 鳴海球場

  岡崎商000000000−0
  時習館10000000X−1

 時習館先制の一点を守る
(朝日)岡崎商杉山投手は実によく投げた。長身から投げ下す速球はよくウエイトが乗って重みがあり、カーブ、シュートの切れも鋭く時習館の攻撃を立派に抑えていた。これは特異なモーションから快速球を決める時習館戸田に勝るとも劣らない好投であったが立上りのわずかなつまずきと味方の攻撃陣の後続不振から惜しい試合を失ってしまった。
 一回杉山は二死後鈴木に中前安打と盗塁を許し、続く戸田にテキサス気味の右前適時打をたたかれた。結局この一点が命取りとなったわけだが、いま少しの攻撃力があれば十分互角に持ち込める機会があっただけに余計惜しまれてならない。二、四、六、九回の一打同点のチャンスがそれである。時習館は先取の一点を戸田の力投と三併殺を記録するバックスの好守で守り抜いたが、全般としては杉山を打ちあぐんで、出来のいい試合ぶりではなかった。強いていえば時習館の落着きが懸命に追いすがる岡崎商をうまく制した一戦といえよう。(玉腰)

準々決勝 八月一日 鳴海球場

  岡崎工000000000−0
  時習館01000011X−3

 戸田(時習館)岡工を完封
(朝日)時習館は二回佐藤の左中間三塁打で素早く先取点をあげた。その後岡崎工稲垣の速球を打ちあぐみ、苦しかったが、七回ようやく疲れのみえた稲垣を打ち込んで加点。八回巧みなバント攻めで岡崎工をカキ乱し、勝利の足場を固めた。時習館戸田は極めて調子よく力のこもった投球で、外にスライドする球と速球を低目にコントロールして岡崎工打線を抑え、七回無死二塁打を打たれたが、後続を見事に断ち切ってつけ入るスキを見せず、結局一人も三塁を踏ませなかった。
 岡崎工としては七回はじめてのチャンス、トップの長生が左中間を破る長打を飛ばして反撃の手掛りをつかんだが、時習館バックスの攻守にはばまれて一死、最終回も無死単打に出たが、後が続かず無念の涙をのんだ。

準決勝戦 八月二日 鳴海球場

  時習館  000000000−0
  津島商工20010010X−4

時習館 . 津島商工
守備 選手名 打数 安打 三振 四球 犠打 盗塁 失策 守備 選手名 打数 安打 三振 四球 犠打 盗塁 失策
4 沖田進吉 3 0 1 1 0 0 0 5 橋本 3 2 0 0 1 1 0
9 森 邦彦 1 0 0 0 0 0 0 8 坂井田 4 2 1 0 0 1 0
9 山本浩平 3 1 0 0 0 0 0 2 飯田 3 1 1 0 1 0 0
2 鈴木実信 3 0 0 1 0 0 0 9 服部 4 2 0 0 0 0 0
1 戸田好宥 4 0 1 0 0 0 0 6 鯉渕 4 2 0 0 0 0 0
4 本多昭治 3 0 0 0 0 0 0 3 水谷 4 0 0 0 0 0 0
8 佐野直樹 3 1 0 0 0 0 0 7 鈴木 4 1 0 0 0 0 0
6 佐原明彦 3 1 0 0 0 0 0 1 安藤 3 1 1 1 0 0 0
5 金子堅太郎 3 0 0 0 0 0 1 4 浅野 3 1 0 0 1 0 0
7 中尾益也 3 1 0 0 0 0 0 二塁打:中尾(時習館)・坂井田(津島商工)
29 4 2 2 0 0 1 32 12 3 1 3 2 0

安藤、時習館を完封、津島商工 短打戦法が成功
(朝日新聞)この試合の興味は定評ある時習館に対し上げ潮の勢いにある新鋭津島商工がどのような戦いぶりを示すかということにあった。ところが津島商工の攻守は完全に時習館を上回り、前日に引き続いて強豪を破る大番狂わせの再現となってスタンドの興奮をかき立てた

 攻撃面の津島商工は一同先頭打者の橋本が右前に快打を放って捕逸で二進、飯田2−1後から高めに入るカーブをうまく中前適時打して最初の走者を迎え入れ、服部も二塁右に内野安打して断然有利な二点を先取した。

 さらに勢いに乗った攻撃は四回鈴木、橋本、坂井田の安打で一点、七回には坂井田の右中間二塁打からスクイズ成功の追加点で勝利をはっきりと確保した。

 時習館戸田好宥の速球に対しバットを短く握り、確実な短打主義に出た打法の成功が十二安打の計四点をあげる立派な成績となったものである。

 また守っても安藤投手が例によって落着いたプレート態度で、外角低目の直球とカーブをミックスさせて沈滞気味の時習館打線を四安打、零敗に退ける好投をみせた。打たせて取る型の安藤をよく盛り立てた鯉淵遊撃手をはじめ浅野二塁手、坂井田中堅手らの攻守も勝利の一因として見逃すころは出来ない。津島商工連日の金星は勝敗を度外視してたんたんと戦うところにあり、さしずめ無欲の勝利というべきものだろう。

 時習館は持ち前の闘志が少しもみられず、打陣も安藤のベースにはまっていいところがなかった。戸田の投球も単調さが目立って好打を許していた。時習館完敗の一戦である。(玉越)

 愛知代表は、津島商工が中京商業を二対○で破り、甲子園初出場。中京商業は五連覇をはばまれた。
 第39回選手権に出場した津島商工は岐阜商に 7:0 で敗退。優勝は法政二高(神奈川)を 3:1 で破った広島商。



秋季東三リーグ戦 八月二十日〜 豊橋球場     新チーム 東三リーグ優勝

                               時習館 11ー1 豊川
                               時習館 8ー0 新城
                               時習館 5ー2 豊商
                               時習館 2ー1 豊橋工
                               成章   6ー5 時習館
                      二次リーグ  時習館 2ー0 国府
                               時習館 2ー0 豊商
                               時習館 2ー1 豊橋工業
                               時習館 2ー2 成章
                        優勝戦   時習館 4ー2 豊橋工

全三河大会 岡崎高校校庭ほか

              一回戦 九月二十二日  時習館010010100−3   山本、白井ー佐久間
                               挙 母 000000000−1   永山、武田ー鈴木誠、小林

 時習館、挙母を完封
(中日)優勝候補の時習館は二回佐久間、甫喜山の安打で一点を先取。五回には安打で出た白井が挙母鈴木誠捕手のパスボールで二塁から生還して一点、さらに七回ダメ押しの1点を追加して計三点をあげ、一回戦をものにした。挙母は時習館のエース、左腕山本にまったく押さえられ、四安打を散発したのみでシャットアウトを喫した。

             準決勝戦 十月二十七日  豊橋工301000000−4  今泉ー鳥居
                               時習館000000000−0  山本ー佐久間

(中日)戦前有利と思われた時習館は、山本投手が立上がり好球をそろえ、豊工に4安打集中の3点をとられ、その裏よく好打するも、正面をつき、三回には豊工今泉、山本の安打でダメ押しとも思われる1点を加えられ、予想外の敗戦に終った。

県下大会 鳴海球場

                       一回戦 十月十三日 滝実 4ー2 時習館




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