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                           昭和31年度(1956年)

 藤田良彦監督率いるチームは、いささかも変わりなく、東三リーグは二次までで全三河大会には出場できなかったが、遠征等は好成績で、夏の大会に臨んだ。

春季東三リーグ戦 四月二日〜 豊橋球場

                               時習館 10Aー0 蒲郡
                              時習館   0ー0 成章
                              豊橋工  3Aー1 時習館
                              豊商     3ー0 時習館
                     二次リーグ  時習館   4ー3 成章
                              豊川     1ー0 時習館
                              時習館   8ー0 豊橋東
                              豊商     2ー1 時習館

招待・遠征試合

                    四月二十九日 時習館 12Aー0 海津   (各務原)
                     五月五日   岐阜商   8ー0 時習館 ( 〃  )
                        十三日  時習館   5ー1 掛川西 (本校校庭)
                     六月十日   時習館   0ー0 清水商
                        十六日  時習館   1ー0 浜松工
                       二十三日 時習館  5Aー2 岡崎工
                       二十四日 時習館   5ー1 多治見工
                       二十五日 愛知大   5ー2 時習館



  ■第38回選手権大会(昭和31年・1956年)の愛知県大会 “準優勝”

 第38回全国高校野球選手権大会愛知大会は、六十九チームが参加、七月二十一日から鳴海、豊橋、一宮、刈谷の四球場で開催された。

 時習館は愛知商、豊川、一宮など強豪をなぎ倒し、決勝戦は中京商と対戦となったが、その牙城を崩すことができなかった。

            
                     優勝戦で中京商に破れて(前列真ん中が中村充男さん)

一回戦 不戦勝

二回戦 七月二十四日 刈谷球場

  時習館010000300−4
  碧  南000000002−2

(朝日)時習館は二回三つの四球で一点を先取したものの、碧南小笠原投手のムラのある投球にかえって悩まされ、六回まで残塁八という苦しさだったが、七回鈴木勝の安打に続く戸田、中西の四球で迎えた二死満塁に鈴木実が左中間を抜く三塁打を放って一挙三点をあげて大勢を決した。
 一方碧南は時習館戸田、坂田両投手が打ち込めず、三振十四を奪われたが九回裏小笠原の単打、鈴木の二塁打、さらに神谷の単打と続いて二点を返し、零敗を免れた。

三回戦 七月二十六日 一宮

  惟  信0000000−0
  時習館120031A−7
  (七回コールドゲーム)

時習館、打力振い勝つ
(朝日)時習館は上位打者の好打で問題なく惟信を降した。まず一回惟信の横手投げ西垣投手に中村、中西が痛烈な二塁打を浴びせ一点、二回にもリリーフ内田に大して四球を足場に遊撃のダブル・エラーと中村の適時打で二点、五回には鈴木実の二塁打を織り込む三点、これに六回中村の長打による追加点でコールドゲーム勝ちを記録した。なかでもの四打数四安打は見事であったが、戸田投手も多少制球に難はあったものの惟信の攻撃を六回まで一安打に抑え、七回には坂田に引き継ぐ余裕をみせて勝利を飾った。惟信も力一ぱい戦ったが、打撃が振わないため完敗した。

四回戦 七月二十八日 鳴海球場

  時習館000011000−2
  愛知商000000000−0

攻守振う時習館
(朝日)愛商の小曾根投手は非力ながらカーブをいいコースに決めて前半なんとか時習館の打棒をかわしていたが、五、六回力尽きて打たれ、取り返しのつかぬ得点を許してしまった。これにたいする時習館の戸田投手はピッチングにうま味こそなかったが、外角低目をつく速球で力投を続け、七、九回それぞれ一本ずつ長打を許したものの、危げなく愛商打線を抑え切った。時習館勝利の得点はまず五回中前安打の坂田二盗し、榊原も単打したあと重盗(愛商東川捕手のボーンヘッド)なんなく均衡をやぶり、六回には安打で出た中西を鈴木勝が左前にタイムリーヒットして加点したもの。両チームにそれほど実力の開きは認められなかったが、やはり投手力において時習館がやや優れていたようだ。その点主将西村の故障で、小曾根をマウンドに送らねばならなかった愛商の不運といわねばなるまい。(山崎)

準々決勝戦 七月三十一日 鳴海球場

  時習館030000 10−4
  豊  川120000000−3

互角の勝負、気力の差
(朝日)両チームとも立上り投手が乱れ、これにつけ込んで激しく攻め合ったので、序盤はかなりもつれて乱戦模様だったが、三回以後はともに立直って、戦況はガラリと一変、緊迫した空気のうちに回を重ねた。立上りおもつれというのはバックスの不手際に乗じ、幸先のよい先行点を奪った豊川であったが、二回どうしたことか谷が大きく崩れ、三つの四球を連発して押し出し、なお満塁のピンチに中村に痛打を浴び、たちまち追いい抜かれた。しかし時習館の戸田も乱調で三つの四球を与えてフルベースと危機を迎えた。ここで時習館ベンチは打者太田に対し、サウスポー坂田を送って策したが、果さず、中前に打込まれタイとなった。
 その後、谷は落着きを取戻し持味を生かした下手投げで時習館の打線を阻めば、時習館また戸田、坂田と球質の異なる左右両投手を度々チエンジさせて、豊川打者の目先を変え、決勝の点を争って勝負を後半へ持越した。そして七回のピンチもこの手で切抜けた時習館は八回、先頭打者佐藤が選ぶやこれを巧く坂田、榊原が送ったあと、この日の当り屋中村がまたも中前に殊勲打を飛ばして佐藤をホームに呼び込み、待望の勝利点を挙げ、必死に食下がる豊川の追撃を振切った。両チームの力はほとんど互角で優劣はつけ難かったが、結局、気力の点でやや優れを見せた時習館にがい歌が上った。豊川としても悔いない善戦であった。(山崎)

準決勝戦 七月三十日 鳴海球場

  一  宮000100000−1
  時習館00003002A−5

実力伯仲 激しい攻防、一宮に焦り
(朝日)実力伯仲の両チームの試合は、激しい攻防を展開して場内をうならせた。四回先発戸田の思わぬ乱れから押出しの一点を献じ、苦しんだ時習館であったが、じりじりと反撃態勢を整えて一宮に迫り、五回二本の単打と四球で満塁のチャンスに、沖田が1ー0の後の内角高めの好球をはっしとたたけば走者一掃の殊勲打となって左中間を大きく破り、ここに形勢は逆転した。
 波の乗った時習館はなおも攻撃の手をゆるめず、八回中西の三塁打などで二点を加えて一宮に止めを刺した。時習館は五回の逆転を機に予定通り球質の異なるサウスポー坂田を繰出して一宮の反撃を断つ策を立てた。結果から見てこれが成功、坂田は打者のヒザ元を衝く速球と、大きく曲り落ちるカーブを混投してはやる一宮打線を完全に自己のベースに巻込み、毎回三振を奪う力投を示して、重責を果した。
 一宮の各打者は最初からやや固くなっていてバットの振りが鈍く、さして好調とも思われぬ時習館の先発戸田の球が打てず、タジタジとなったが、それでも四回二死後から内田の三塁強襲安打を口火に戸田を巧く攻め、満塁押出しで先制点を挙げたもののその後が続かず、この回は一点に止まった。もしここで一宮にもう一発の適時打が出ていればこの試合はどう変転していたか分らない。追抜かれてからの一宮は攻守ともに焦りの色が見え、選球も悪く、徒らに悪球に手を出し、七回唯一の反撃チャンスゐつぶしてからは、時習館後略の手掛りを失い、無念の敗北を喫した。(山崎)

優勝戦 八月一日 鳴海球場

  中京商040000200−6
  時習館210001000−4

時習館 . 中京商
守備 選手名 打数 安打 得点 三振 四球 犠打 盗塁 失策 守備 選手名 打数 安打 得点 三振 四球 犠打 盗塁 失策
6 中村充男 4 2 0 0 0 0 0 0 7 富田虎 3 0 1 0 2 0 1 0
4 沖田進吉 3 0 1 0 1 0 0 0 8 富田宏 4 0 0 2 1 0 2 0
3 中西健四 3 0 1 0 1 0 0 0 2 鈴木 5 2 0 1 0 0 0 0
1・7 戸田好宥 4 2 1 1 0 0 0 1 3 星山 4 3 0 1 0 0 0 0
2 鈴木実信 4 1 0 0 0 0 0 0 9 昆野 1 0 0 1 0 0 0 0
8 鈴木 勝 4 1 0 1 0 0 0 0 1 安井 2 1 0 0 0 1 0 0
9 佐野直樹 3 0 0 0 1 0 0 0 6 松原 4 2 1 1 0 0 0 0
7・1 坂田 繁 3 1 1 1 0 1 0 1 5 大森 4 1 1 0 0 0 0 0
5 榊原晴彦 3 0 0 1 0 0 0 0 1・9 本間 3 1 1 1 0 0 0 0
三塁打:戸田、二塁打:坂田・戸田 9 拓植 1 0 0 1 0 0 0 0
4 梅村 4 2 2 1 0 0 1 0
31 7 4 4 3 1 0 2 35 12 6 9 3 1 4 0

時習館の先取点空し、中京商、総合戦力の勝利
(朝日新聞)優勝の栄冠は四度中京商の頭上にサンと輝いた。もえるような炎熱のもと、総力をふりしぼって相戦う両チームの激突は郷土の代表権をかけての試合にふさわしい攻防となってグラウンドの観衆を沸かせたが、球神は遂に時習館に恵まなかった。この試合は、序盤は互いに思わぬ投手の不調からもつれにもつれた。まず時習館は中京商の先発本間の乱調につけこみ沖田進吉中西健四がうまくえらんだあと戸田好宥が右中間を破る痛烈な三塁打を放って素早く二点を先行、有利な態勢て立上ったのだ。
 一方中京商は、このぶちあたりに一時はたじたじとなったが二回すぐ反撃の態勢を整えて一気に時習館を押し返した。即ちこの回中京商は球にのびのない時習館戸田投手を攻め立てトップ松原が、いきなり榊原三塁を強襲、大森も二塁右を抜いて一、三塁としたあと本間の一撃は中前に飛び、まず一点、ここで見かねた時習館ベンチは切札坂田繁左腕を繰出したが、ウォーム・アップ不足から肩が極らず、また鈴木実信捕手との呼吸も合わずパスボールで与えずもがなの一点を許して追いつかれてしまった。これに心理的動揺を見せた坂田は、さらに不要の一塁牽制がボークとなり、その上二塁牽制は悪投となるなどして、取り返しのつかぬ計四点を奪われて一気に逆転されてしまった。
 しかし時習館はこの不運にもめげず六回には戸田の長打をうまく生かしてタイに持ち込みなおも無死一、二塁と中京商を圧迫し続けたが、惜しくも後続をたたれてこの好機を逸してしまった。
 これに引きかえ中京商は先発本間投手が最初やや固くなっていて、いちじるしい制球難に陥り、球をととのえんとするところを打たれ、二回にも四球と短打などで時習館の追撃を許したので、すばやくエース安井をマウンドに送った。試合前安井は身体の不調を伝えられていたが、果して球威にやや欠けるうらみはあったが、カーブを巧みに生かして、要所要所をよくしめ老練な投法で時習館の反撃を最小に食い止めた。中京商は三回の好機をスクイズの失敗につぶしてからは時習館坂田の大きく曲がり落ちるカーブにややてこずった感じだったが、ジリジリとつめより、遂に七回梅村の遊撃内野安打から反撃のきっかけをつかみ、富田虎四球で歩き、富田宏は三振に倒れたが、鈴木遊三間を突破して満塁としたあと、星山の意表をつくスリーバントは内野安打となり、安井も投手頭上を抜くヒットを放って、この回文句のない二点を奪った。

 結局この得点がものをいって中京商が優勝を手中に収めたものだが、それにしても時習館が演じた二回の乱れは余りにも痛かった。高校生の至純なプレーは往々にしてこのようなピンチに大事を引起しがちなものだが、大試合に、しかも逆転のリードを奪われるということはその後の両チームの戦力に大きく響くことは明らかである。いずれにしても近来にない好試合であったことは万人の認めるところ。中京商は総合戦力を挙げて堂々の勝利をあげたものだが、時習館も敗れて悔いのない戦いぶりだった。

 かくて中京商業は愛知代表となり四年連続して全国大会へ進んだ。
 第38回選手権大会に出場した中京商は千葉商に 5:0 で勝利、米子東に 1:0 で敗退優勝は岐阜商を 3:2 で破った平安(京都)。



 《1番遊撃手の中村(現姓松井)充男さんについて》

 筆者には、もう一つのホ−ムペ−ジ「日本のモ−タ−サイクルレ−スの夜明け(http://www.iom1960.com/)」を開設している。これは、「バイク(二輪車)のレース関係のHP」である。このHPを通じて、知り合いとなった春日井にお住まいの「伊藤静男さん」とは、もう4年余のお付き合いである。彼は、筆者より2才年下、浅間時代からレースを楽しみ、70才を過ぎた現在も元気にバイクを楽しみ、ヨーロッパへも足をのばしている有名人である。この伊藤さんのバイク仲間に、同じ春日井在住の「中村(現姓松井)充男さん」がいたのである。中村さんは時習館卒業後、愛知大学→春日井の王子製紙に進み、定年まで勤められたようである。
暫く前 心筋、脳梗塞を併発しましたが、奇跡的に回復、バイクを運転出来るようになりましたが、家族の反対で、最近は BMW を止めて大型スクーターに乗換えて楽しんでいるとのことです。(2006年6月記) 

                     
                              右が中村(現姓松井)充男さん



秋季東三リーグ戦 八月二十日〜 豊橋球場ほか

                                 時習館 2Aー1 国府
                                 時習館 6Aー4 成章
                                 時習館 17ー0 蒲郡
                        二次リーグ  時習館  6ー3 豊商
                                 時習館 6Aー0 国府
                                 豊川    2ー1 時習館
                                 時習館  2ー2 豊橋工

全三河大会 十五シーズンぶりに優勝  豊橋球場

                 一回戦 九月三十日    挙 母  000030000−3
                                 時習館00010300A−4

                 二回戦 十一月十七日  時習館014101013−11
                                  豊川 000000001−1

               優勝戦 十一月二十四日  時習館000100020−3
                                 岡崎北000000030−3
                                    (日没引き分け)

          優勝戦(再試合)十一月二十四日  岡崎北000000000−0  丹羽、細川ー近藤
                                 時習館00000006A−6  戸田ー鈴木

晴れの優勝、戸田が好守に活躍
(中日)岡崎北の先攻で開始されたこの試合は終盤近くまで両軍投手の好投で息詰るような投手戦の様相を呈したが八回裏時習館は地力を発揮して打者十二人を送る大量6点を奪いエース戸田の好投と相まって西三河の強豪岡崎北をシャットアウトで降した。

県下大会 鳴海球場

                        九月二十三日 時習館 2Aー1 中京商
                         十月二十日  時習館 10ー3 一宮商

県下四校リーグ戦 鳴海球場

                        十月二十一日 時習館 3Aー1 愛知商
                           二十七日 愛知高  1ー0 時習館
                           二十八日 享栄商 7Aー3 時習館




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